今回は相手が嫌な感じを受けないように、商品やサービスをアピールする方法について紹介するよ。
今回は心理学や行動経済学のトピックスを交えながら説明していきます。
ギャップをつけて興味を引こう
アンコンシャス・バイアス
アンコンシャス・バイアス(Unconscious bias)とは、自分自身が気づいていない偏見ともいえる偏った印象(思い込み)のことを言います。
これは「自覚しない、無意識の」を意味する「Unconscious」と、「先入観、偏見」を意味する「Bias」を組み合わせた言葉です。長くなりますので、以下では単にバイアスと言うことにします。
日本人が持っているバイアスの具体例としては、下記のものが挙げられます。
- 女性は理数系が弱い
- 口下手は営業に向かない
- 役所は融通が利かない
具体例を見てもらえれば分かる通り、正しくはないよね。
システム1とシステム2(二重過程理論)
心理学や行動経済学の世界では、人が物事を判断する際には、2つのシステムが存在するとされています。
この2つのシステムは、応用心理学者のキース・スタノヴィッチ(Keith Stanovich)とリチャード・ウェスト(Richard West)が2000年に発表した論文の中で、直感的判断を司るシステム1と論理的思考で使うシステム2があると定義されています。
システム1 | システム2 |
---|---|
直感的で速い思考 | 論理的で遅い思考 |
経験論的意思決定 | 帰結主義的意思決定 |
高容量 | 容量に限界 |
連想的 | 規則的 |
マルチタスク | シングルタスク |
考えるのに努力はほぼ不要 | 考えるのに注意力が必要 |
人間の脳は直感的判断司るシステム1に強く支配されています。
それは脳は「出来るだけ余計なエネルギーを使わないこと」を基本としているからです。
システム1は直感的で速い判断をするために、すぐ参照できるパターンとしてバイアスを持っています。
バイアス(無意識の偏見)が生まれる原因は、脳が出来るだけエネルギーを使わないようにしているためだね。
ギャップをつける
商品やサービスを販売しようとする場合、思わずアピールポイント(スペック)を一生懸命説明してしまいがちです。
しかし、いきなりアピールポイントを説明されても、相手の頭には入っていきません。まずは相手に興味を持ってもらう必要があります。
人は「ギャップ」に興味を抱きます。「○○なのに、××」というものですね。
前述の例に当てはめていうと、「女性なのに、理系」という具合です。2010年ごろから「リケジョ」という言葉が使われていますが、これはいい例だと思います。逆に「リケダン」では面白くないですからね。
商品やサービスを販売する際にはアピールポイントを探し、その次にその商品やサービスの持つバイアスが何かを考える必要があります。
アピールポイントとバイアスを考えて、ギャップをつけるとしたらどうするかを考えよう!
相手に質問してもらおう
心理的リアクタンス
自分の自由を脅かされたり、奪われたと感じたとき、それを回復しようとして生じる心理作用を心理的リアクタンス(Theory of psychological Reactance)と言います。
嚙み砕いて言うと、「意見や行動を他人から強要されると反発し、かえって自分の意見に固執すること」です。
例えば、親が「勉強しなさい」と𠮟るほど、子どもが勉強しなくなる現象がそれに当たります。
話を戻し、あらゆるコミュニケーションにおいて、相手にとってどんなにいい話でも、相手にそれをおすすめした瞬間に心理的リアクタンスが働きます。
これは商品やサービスを販売する際もとても厄介になります。
ギャップをうまく見つけて、その実績や経験談から「私にはあなたのお役に立てる提案がたくさんあります」というと説得力があるように感じますが、それはNGということになります。
心理的リアクタンスが働き、「自分の役に立つとか断定されたくない!」と思ってしまうからです。
ギャップは有効だけど、自分から話すと逆効果になるよ!
質問を誘導する
ギャップをつける目的は、心理的リアクタンスを働かせないように相手から質問を誘導することです。
手順は以下のとおりです。
- バイアスのギャップを用いて、相手に興味を持ってもらう
- そうすると相手は「どうして○○なんですか?」と質問したくなる
- その質問に答える形で、アピールしたいことを話す
ギャップはその商品やサービスを販売する上で不利にならないものであれば、どのようなものであっても問題ありません。
しかし、思わず質問したくなるような仕掛け(話のタネ)は仕込む必要があります。
広告のフレーズ、販売員の服装、名刺などに仕掛けを仕込もう!
まとめ
以上を踏まえ、人間の無意識を活用した商品やサービスのアピールの手順は下記の通りです。
- 商品やサービスで最もアピールしたいポイントはなにかを考える
- 商品やサービスの持つバイアスはなにか考える
- アピールポイントとバイアスを考慮し、どのようなギャップをつけるか考える
- そのギャップを質問してもらうための仕掛け(話のタネ)を仕込む
- 質問の答えはアピールポイントに繋がっているかチェックする