定数係数の二階線形同次微分方程式は、特性方程式の解から一般解を導出することができます。
しかし、式(1)のような変数係数の二階線形同次微分方程式(斉次微分方程式)を一般的に解く方法はなく、限られた場合しか解く方法はありません。
なお、変数係数というのは、係数がxの関数になっているものを指します。
y” + P(x) y’ + Q(x) y = 0 \tag{1}
本記事では、下記の解法が適用できる場合ついて、解説していきます。
解法
式(1)の微分方程式の特殊解v(x)を見つけ、y = u(x) v(x)とおくと、式(1)はu'(x)を未知関数とする一階同次方程式に帰着される。
例題と解答

心太
上で示す解法を使う場合は、何らかの方法で式(1)の特殊解v(x)を見つけないとダメですね。。。

カヲル
特殊解の形を予測して、それらを代入して試してみるしかないね。
候補としてはy = x^mやy = e^{mx}が考えられるよ。
例題
次の微分方程式の一般解を求めよ。
\begin{eqnarray}
&(1)& \ y” + \frac{1}{x} y’ \, – \frac{1}{x^2} y = 0 \\
&(2)& \ xy” \, – (3x + 1) y’ + 3 y = 0
\end{eqnarray}
解答(1)
特殊解としてy = x^mの形を試してみる。
y = x^m、y’ = mx^{m-1}、y” = m(m-1)x^{m-2}を微分方程式に代入すると、
m(m-1)x^{m-2} + \frac{1}{x} mx^{m-1} \, – \frac{1}{x^2} x^m = 0
となる。式を整理すると、
\begin{eqnarray}
m(m-1)x^{m-2} + mx^{m-2} \, – x^{m-2} &=& 0 \\
\\
\{m(m-1)+m-1\}x^{m-2} &=& 0 \\
\\
(m^2 – 1)x^{m-2} &=& 0 \\
\\
(m + 1)(m – 1)x^{m-2} &=& 0
\end{eqnarray}
となり、m=-1またはm=1ならば恒等式が成り立つから、y = x^{-1}、y = x^{1}が特殊解となる。
この2つの解は1次独立であり基本解となるから、C_1、C_2を任意定数とし線形結合すると、一般解は下記のようになる。
y = C_1 \, x + \frac{C_2}{x}

カヲル
もし、恒等式が成り立つようなmが見つからないときは、特殊解候補としてハズレなので他の候補を試してみてね!
解答(2)
特殊解としてy = e^{mx}の形を試してみる。
y = e^{mx}、y’ = m\, e^{mx}、y” = m^2 \, e^{mx}を微分方程式に代入すると、
x m^2 \, e^{mx} \, – (3x + 1) m\, e^{mx} + 3 \, e^{mx} = 0
となる。両辺をe^{mx}で割って整理すると、
\begin{eqnarray}
x m^2 \, – (3x + 1) m + 3 &=& 0 \\
\\
(m – 3)(mx \, – 1) &=& 0
\end{eqnarray}
となり、m=3ならば恒等式が成り立つから、y = e^{3x}が特殊解となる。
上で示した解法に沿って、y = u e^{3x}(uはxの関数)に変換する。
y = u e^{3m}を1階微分すると、
\begin{eqnarray}
y’ &=& u’ e^{3x} + 3u e^{3x} \\
\\
&=& (u’ + 3u) e^{3x}
\end{eqnarray}
y = u e^{3m}を2階微分すると、
\begin{eqnarray}
y” &=& u” e^{3x} + 3u’ e^{3x} + 3u’e^{3x} + 9u e^{3x} \\
\\
&=& (u” + 6u’ + 9u) e^{3x}
\end{eqnarray}
となる。求めたy、y’、y”を微分方程式に代入すると、
x(u” + 6u’ + 9u) e^{3x} \, – (3x + 1) (u’ + 3u) e^{3x} + 3 u e^{3x} = 0
となる。両辺をe^{3x}で割って整理すると、
\begin{eqnarray}
x(u” + 6u’ + 9u) \, – (3x + 1) (u’ + 3u) + 3u &=& 0 \\
\\
xu” + 6xu’ + 9xu – 3xu’ – 9xu – u’ – 3u + 3u &=& 0 \\
\\
xu” + (3x \, – 1)u’ &=& 0 \\
\\
u” + (3 \, – \frac{1}{x}) u’ &=& 0
\end{eqnarray}
となる。これはu’を未知変数とする一階線形同次微分方程式である。
一階線形同次微分方程式の公式
y’ + P(x)y = 0の一般解は、Cを任意定数とすると下記のように表される。
y = C \, \exp\left\{- \int P(x) \, dx \right\}
よって、C_1を任意定数とし、上記の公式を用いると、
\begin{eqnarray}
u’ &=& C_1 \exp \left\{ – \int \left( 3-\frac{1}{x} \right) \, dx \right\} \\
\\
&=& C_1 \exp \left( -3x + \ln|x| \right) \\
\\
&=& C_1 \, e^{\ln|x|} \, e^{-3x} \\
\\
&=& C_1 \, |x| \, e^{-3x} \\
\\
&=& \pm \, C_1 \, x \, e^{-3x}
\end{eqnarray}
となる。\pm \, C_1を改めてC_1と置きなおし、u’を積分してuを求めると、
u = C_1 \, \int x \, e^{-3x} \, dx + C_2
となる。ここで積分の部分を先に計算する。部分積分を用いると、
\begin{eqnarray}
\int x \, e^{-3x} \, dx &=& -\frac{1}{3} \int x (e^{-3x})’ dx \\
\\
&=& -\frac{1}{3} \left\{x e^{-3x} \, – \int (x)’ e^{-3x} dx\right\} \\
\\
&=& -\frac{1}{3} \left( x \, + \frac{1}{3} \right) e^{-3x} \\
\\
&=& -\frac{1}{9} \left( 3x \, + 1 \right) e^{-3x} \\
\end{eqnarray}
となるから、元の式に代入して、
u = \, – \frac{1}{9} C_1 \left( 3x + 1 \right) e^{-3x} + C_2
となる。ここで、- (1/9) C_1を改めてC_1と置きなおすと、
u = C_1 \left( 3x + 1 \right) e^{-3x} + C_2
となり、y = u e^{3x}に代入すると一般解は次のようになる。
\begin{eqnarray}
y &=& C_1 \left( 3x + 1 \right) e^{-3x} e^{3x} + C_2 e^{3x} \\
\\
&=& C_1 \left( 3x + 1 \right) + C_2 e^{3x}
\end{eqnarray}
最後に
変数係数の二階線形同次微分方程式の解き方は他にもありますが、本記事ではその一つについて紹介しました。
微分方程式の勉強法ですが、基本的なものに関してはヨビノリ たくみさんやみつのきチャンネルの直矢さんの動画がとても参考になるかと思います。
教科書と動画の両方を用いると勉強のスピードがぐーんと早まると思います。
本記事では、変数係数の二階線形同次微分方程式の解き方を扱いましたが、変数係数の場合について書かれた教科書はほんの一部です。(定数係数の場合はほぼ全ての教科書に載っています)
参考までに変数係数の解き方について書かれている本を二冊紹介します。
「基礎からの微分方程式」は、初学者でも平易に理解できるように、高校の復習となるところも補足として随時細かく記載されており、数学に自信がない方でも読みやすくなっています。
また、物理の問題と合わせて解き方を解説しているため、よくある大学の教科書のように目的意識が曖昧となり、勉強のモチベーションが低下するということも防ぐように構成されています。
「基礎系 数学 常微分方程式」も同様に、変数係数の二階線形同次微分方程式の解き方が書かれています。
こちらは「基礎からの微分方程式」より少し進んだ内容となっています。偏微分方程式に関しては同じシリーズで本が出版されています。
