ベルヌーイの定理(Bernoulli’s principle)は、粘性が存在しないと仮定した流体(完全流体)において流体の持つ圧力エネルギーと運動エネルギーを結び付けた非常に使い勝手の良い便利な式で、流体を扱う多くの機械設計の現場で使われている式です。
一方、以前の記事で紹介したとおり、流体力学の支配方程式(基礎方程式)は連続の式、ナビエ・ストークス方程式、エネルギー方程式の3つがあります。
本記事では、ナビエ・ストークス方程式(運動方程式)からベルヌーイの定理(ベルヌーイの式)を導出する方法について解説します。
ベルヌーイの定理の導出
流体の運動を記述する支配方程式(ナビエ・ストークス方程式)は以前の記事で紹介した通り、以下の式になります。
粘性は存在しないと仮定し(もしくは無視できるほど小さい)、粘性項を消去すると以下のようになります。
式(2)はオイラー方程式(Euler equations)と呼ばれています。
式(2)はベクトルの方程式ですが、1次元にすると以下のように書き換えることができます。
さらに左辺第一項の非定常項を削除し、定常流れに限定します。これにより流速\(v\)と圧力\(p\)は位置\(x\)のみの関数となるため、常微分方程式の形に書き換えることができます。
上式の両辺を積分し、整理すると以下のようになります。
式(5)は圧縮性流体(\(\rho \neq const.\)) おけるベルヌーイの式ですが、一般的には非圧縮性流体(\(\rho = const.\))での式の形のほうが有名であるため、密度\(\rho\)は定数として式(5)の積分部分を計算すると以下のようになります。
つぎに式(6)を下図のような管路に当てはめて考えてみます。
いま、断面1から断面2へ非圧縮性と見なせる密度\(\rho\,(kg/m^3)\)の流体が流れているとします。
このとき、断面1の圧力\(p_1\,(Pa\:abs.)\)、流速\(v_1\,(m/s)\)と断面2の圧力\(p_2\,(Pa\:abs.)\)、流速\(v_2\,(m/s)\)の関係は以下のようになります。
なお、重力による位置エネルギーもベルヌーイの式に入れることができますが、気体の場合は他の項に比べて十分小さく、通常は無視できます。
まとめ
今回は流体力学の支配方程式の1つであるナビエ・ストークス方程式から流体力学の教科書に必ず記載されているベルヌーイの式の導出方法を簡単に解説しました。
流体力学についてもう少し勉強されたい方は、非圧縮性流体がメインになりますが、以下の書籍が参考になります。
圧力、粘性、圧縮性、渦度などの基礎的事項の説明からベルヌーイの定理、クエット流れ、ポアズイユ流れや境界層の流れなど押さえておくべき事項は一通り記載されています。また、最後の章は数値計算力学への導入(入門)も書かれており、それほど分厚いほんではありませんが、内容が非常に充実しており 手元においておきたい一冊です。
超・基礎から解説!ナビエ・ストークス方程式の導出【流体力学】 【圧縮性流体力学】エネルギー方程式とモデルベース開発(MBD) オリフィスを通る質量流量の計算法【流体力学】