Oリングの設計【つぶし率、圧縮荷重(反力)の計算】

こんにちは、カヲルです!

今回は基本的な機械要素の一つであるOリングに関して取り上げたいと思います。

なお、Oリング以外のシールはCAEで面圧を計算したり、感圧紙などで実測したりする必要がありますのでこの記事では取り上げないこととします。関連記事としてゴムの硬度からヤング率を計算する記事を書いてますのでそちらをご覧ください。

感圧紙の例

Oリングの設計

Oリングの役割

機械を設計する上で製品機能を保つために外からくる水、油、粉塵などの流体や固体の異物が内部に侵入しないようにしたり、内部で流れている流体が漏れないようにしたい場合があります。

この様な場合に一番最初に思いつくのは弾性部材を部品間の合面に挟み、圧縮による発生する面圧でシール(気密)することではないでしょうか。

もっとも基本的なものはO(オー)断面のOリングだと思います。通常はゴムで作られており、接触する薬品や使用温度に気を付ける必要があります。

シール原理

一般に機械加工された平坦で傷がない溝にOリングを入れ、相手側のふたとなる部品でつぶし、面圧を得ることでシールします。

Oリングは圧縮により流体の圧力以上の面圧を発生しているときにシールしますので、設計する機械システムがかかり得る流体の圧力も把握しておくことも必要になります。

また、通常、Oリングは溝中心に対しオフセットした形で配置します。

これはOリングに流体からの圧力を受け溝側面に接触することで上下方向の面圧が増えることを期待するものです。この作用をセルフシールと言います。

Oリング溝の表面粗さ

Oリングの溝はシール性を確保するため、マシニングセンター(M/C)やNC旋盤などで加工することが多いかと思います。

一般に表面粗さは細かいほうがよいですが加工能力等も加味しつつ、溝の表面粗さはRz6.3以下で図面指示することが多いです。

充填率

なお、Oリングの溝の断面積に対するOリングの断面積の割合を充填率と言います。

ゴムはポアソン比が約0.5の材料ですので、圧縮による体積変化はしません。そのため、充填率は100%以下でなければなりません。

一般には溝とOリングの公差のワーストケースでも90%以下に抑えることが多いです。

つぶし代、つぶし率

Oリングは圧縮することによってシールしていますので、安定して面圧が出せるようにゴムの硬度は一般に70度に設定することが多いです。

Oリングがシール出来る流体の圧力は0.1~0.5MPa前後ですが、Oリング溝とふたとなる部品の間に隙間があると圧力によりOリングが入り込みシール不良を起こすため、その場合は隙間を埋めるバックアップリングと言う部品を使用します。

上記を満たした上で機械システムへの組み込み状態でのOリングのつぶれ量を設定する必要がありますが、このつぶれ量をつぶし代(しろ)と言い、その割合をつぶし率と言います。

つぶし率は10~30%の範囲に収まるように設計します。

圧縮荷重、接触面圧

Oリングは弾性によりシールする仕組み上、Oリング溝やふたとなる部品は反力(圧縮荷重)を受けます。

この圧縮荷重に負けないように強度やねじの軸力を設定する必要があります。

引張圧縮試験機などでつぶし率最大時の圧縮荷重を確認する必要がありますが、下の式で概算することもできます。

(参考文献:最新シーリングテクノロジー 密封・漏れの原理とトラブル対策)

なお、接触面圧を求めるのは難しいですが、おおよその値でよければヘルツ接触で代用してしまう例もあるようです。

材料選定

規制品のOリングでも材料は何種類か用意されており、使用温度接触する流体への耐性があるかなどを基準に設定する必要があります。

特に使用温度に関してはこちらを超えると機械システムの使用初期でシール不良になりますので、短期的に使う間に合わせのものでも注意が必要です。

また、長期的に使うものであれば、環境試験(高温放置試験、低温放置試験、熱衝撃試験、耐オゾン試験、耐薬品性試験、など)で確認を行う必要があります。

最後に

上記以外でも気を付ける部分は多くありますが、今回は基本に絞って解説しました。

Oリングは気軽に使えるシール部品ですが、重要な機能を果たしているため正しく設計、試験評価されていない場合は大きなトラブルになることも多いです。

最初のステップとしてこの記事で少しでもお役に立てれば幸いです。

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