【微分方程式の活用】温度予測 どうやるの?③

こんにちは、カヲルです!

今回は微分方程式を活用した温度予測の3回目の記事になります。前回は予め実験を行うなどしてその装置の熱時定数τ(タウ)が既知の場合に途中までの温度上昇のデータから熱平衡状態の温度(到達温度)を求めていく方法について書きました。前回の記事を読まれていない方はこちらを確認お願いします。

今回は逆に実験データから各パラメータを求める方法とそのパラメータを用いて雰囲気温度などの条件を変えた場合の昇温特性等を求める方法について書きたいと思います。

では前回までと同様に例としてビーカーに入った液体をヒータで温めた場合の昇温特性(や降温特性)の実験データから熱抵抗、熱容量を求める方法について書いていきます。

今回は熱平衡状態の温度が分かっている場合とします。

熱抵抗Rtの導出

おさらいとなりますがヒータで発生する熱の流れ(液体へ流入する熱の流れ)は下式の通りでした。

また、同様に液体から流出する熱の流れは下式でした。

ここで熱平衡状態ではであるので熱抵抗Rtは

となります。

熱容量Cの導出①(昇温特性より)

次に昇温特性の実験データから熱容量を求めます。

前回求めた温度上昇の式は下式でした。

式変形すると

両辺対数をとると

よって

となります。熱時定数τは1次方程式の形になるようにグラフを作図し傾きを求めることで求めることができます。

熱容量は求めた熱時定数を熱抵抗で割って求めることができます。

熱容量Cの導出②(降温特性より)

降温特性の実験データから熱容量を求める方法も同様です。温度降下の式は下式でした。

式変形すると

よって

となります。こちらも1次方程式の形になるようにグラフを作図し熱時定数を求め、熱抵抗で割ることで熱容量を求めることができます。

グラフより熱抵抗Rt、熱容量Cを求める

ここでは昇温特性の実験データがある場合を例に熱抵抗Rt、熱容量Cを求めてみます。

降温特性の場合も同様であるのでここでは割愛します。

①.グラフ上でサチレートしているところの温度を平均して熱平衡状態の温度Teを求めます。

平均はExcelのAVERAGE関数を用いると簡単です。

②.下式に熱平衡状態の温度Te、雰囲気温度Tr、ヒータの印加電圧E、電流Iを代入し、熱抵抗Rtを求める。

下式に代入する電圧Eと電流I(仕事率P)は前記したヒータで水を温めるモデルでなくても、機械システムなようなものでもよいです。

そのような場合はそれぞれの部品で熱のやりとりもあるので、測定した部品の見掛け上の熱抵抗となります。

③.横軸に時間t、縦軸にln(Te-T)をとって傾きを求め、熱時定数τを求めます。

Tはその時間での温度です。傾きはExcelのSLOPE関数を用いると簡単です。

ここで求めたグラフの傾きに-1を掛けて逆数をとったものが熱時定数τとなります。尚、降温特性から熱時定数を求める場合は縦軸はln(T-Tr)となります。

④.熱抵抗Rtと熱時定数τから熱容量Cを求めます。

こちらも機械システムのようなものを温度測定した場合はその部品(部分)の見掛け上の熱容量となります。但し、効率等は変動しないものとします。

以上より熱抵抗、熱容量を求めることができました。

次に実験データから各パラメータを求める方法について書きたいと思います。

ここまでの計算で用いたエクセルファイルはこちらよりダウンロードできます。

Temperature-prediction-demo2

熱抵抗、熱容量から昇温(降温)特性を求めよう!

こちらもおさらいですが、一番最初に求めた温度変化の計算式は下式のものでした。

この式に先ほど求めた熱抵抗と熱容量を代入して昇温(降温)特性を計算してみましょう。

Excelで計算するときは上式を変形し、温度変化dTをある時間刻み幅dtごとに計算し、

それらを積算(積分)することで昇温(降温)特性を求めることが出来ます。

では実際に手順について説明したいと思います。

①.時間刻み幅Δtを決め、A列に時間t(単位:sec)を入力します。

計算には使用しませんが、グラフを作成した時に便利ないようにA列を3600で割り、時間(h)もB列に表示させます。

②.C列にその時間での雰囲気温度Trを入力し、D列にヒータに流れる電流Iを入力します。

こちらの例では0h~3hは雰囲気温度 20℃、3h~6hは40℃、6h~12hは20℃を入力します。

電流は0h~9hは2A、9h~12hは0Aを入力します。

③.ある時間刻み幅Δtごとの温度変化dTをE列で計算します。

④.1つ上のF列のセルと計算した温度変化dTのセル(E列)を足してその時の温度Tを求めます。

⑤.最後にグラフを作成すると下図となります。

ここまでの計算で用いたエクセルファイルはこちらよりダウンロードできます。

Temperature-prediction-demo3

このように熱抵抗Rt、熱容量Cが分かり、ヒータの電気抵抗Rh、電流I、雰囲気温度Trを決めてやれば自由に計算することが出来ます。

例えば部品の耐熱性や寿命を確認する目的で事前に昇温特性等が知りたいとき等に使用できるかと思います。

条件を振りながら実験するのは非常に時間がかかるので、素早く事前検討したい時等に如何でしょうか。